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若年女性のスポーツ障害について


2016年はリオデジャネイロ五輪が行われ、日本人選手の活躍を見て感動したのがつい先日のことのように思い出される。中でも女性アスリートの活躍はめざましく、好成績を収めた選手が多かったと思う(女子レスリング、卓球、バドミントンなど)。当院でも日頃多くの若年女性からの様々な相談を受けているが中にはアスリートの方も含まれている。

日本産婦人科学会や地方医会でも最近女性アスリートの健康問題(中でも月経に関係する問題)についての勉強会(講習会)などが増えている。そこで、今回は女性アスリートと月経に関する問題を私なりにまとめてみた。

1) 月経困難症  
 生理に伴い強い痛みを感じ日常生活にも影響が出てしまう若年女性がいる。アスリートの場合 月経困難症のために競技におけるパフォーマンスも落ちてしまう可能性がある。鎮痛剤、生理日の移動調整などで
対応する人が多いようだが低用量ピルなどを使用すると痛みそのものが軽減し、継続的に安定したパフォーマンスを発揮できることもある。

2)月経周期異常~不順、無月経など
ハードな練習を続けたり、過度なダイエットを行うと無月経や不順になる事がある。競技の中でも 持久系競技(マラソンなど)の選手と審美系(新体操など)の選手には無月経の割合が比較的高くなる傾向があり BMI(体脂肪の比率の指標の一つ)が17.5以下のグループでは無月経の割合が優位に高くなることは古くから知られている。 これは脂質代謝(脂肪の吸収・分解のバランス)が乱れてしまうのが
原因の1つと考えられている。

3)PMS(月経前症候群)
未だ世間的には認知度の低い疾患としてPMSがある(詳しくはホームページ参照)。PMSは比較的若年女性に多く、生理周期が安定している方でも見られる症状で、アスリートの場合はいろんな形で影響が出るという。
例えば、PMSの身体症状として浮腫みがあるが、むくみが原因で体の動きの切れが悪くなったりする。また、PMSの精神症状の一つに集中力の低下があるが、的を狙うような射的系競技には影響が出そうである。

4)認知不足
以上のような月経に関する様々な問題が若年女性(アスリートを含む)には起こりうる。こうした問題に対してアスリート本人は当然であるが周りの人間(家族や指導者)も理解をすることが先ずは必要なのではないだろうか?あるアンケートによるとアスリートの家族や指導者の中で選手が月経の事で悩んでいることを理解している割合は約半分(男性はより理解度が低い)というデータがある。

理解したうえで、対策を考えることがより良いパフォーマンスを産む(競技に限らず日常生活の質を改善)事に繋がると考える。

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